MasterKoda’s blog

半導体エンジニア、マーケッターです。テクノロジーや読書について書きます。

evianのパッケージ戦略

マーケティングを学んでいる。実生活と繋がる部分が非常に多く、とても興味深い学問だ。


マーケティング (放送大学教材)
橋田 洋一郎 (著), 須永 努 (著) 
Publisher 放送大学教育振興会
Publication date 2013/3/1


書中で指定されている課題「戦略思考に優れていると思われる事例を挙げよ」に取り組んでみた。テーマは個人的に一番好きなミネラルウォーター「evian」のパッケージ(*1)戦略について。軟水が主流を占めるミネラルウォーター市場に硬水を展開し、かつ興味深いパッケージ戦略をとっている。


evian
採水地 エビアン
原産国 フランス
伊藤忠ミネラルウォーターズ(株)


違うパッケージで同じ値段

evianは主に330ml、500ml、750mlのパッケージの3種類を日本のコンビニで展開しているようだ。(1.5L品も存在するが、コンビニでは見かけたことがない。なぜ対象をコンビニに限定しているのかは後述)

https://sc01.alicdn.com/kf/UT84tGPXFlXXXagOFbX7/Evian-Natural-Mineral-Water-500ML.jpg

特に注目なのは、 1. 330ml、500mlを同じ価格で販売 2. 750mlパッケージにディズニーを採用 という点だ。

感覚的には、330ml、500mlで水の量が異なるのに、同じ価格であることは非常に不可解である。しかし、私を含めて世の中の一定割合の人々は、330ml品を購入する。少なくとも、コンビニはこれが売れると踏んで陳列しているし、伊藤忠もそこに価値があると考えて卸しているはずだ。

注目すべきは、「量が少ないことが顧客価値」になっていることだ。これは、携帯性、顧客満足という観点から説明できる。330ml品を選ぶ人は、同じ量の水を手に入れるためのコストを上げてでも、軽くて持ち運びに良いものを選びたい。また、500mlの水を飲むことができなくても、少し乾いた喉を潤すには330mlで十分な場合が少なくない。330mlだけでも十分に顧客は満足するのだ。

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※ evian ホームページより抜粋

また、ラベルにディズニーを採用している点は戦略が想像しやすく、キャラクターを使って顧客の興味を引くことが目的だろう。少し不思議なのは、自動販売機で販売されている500ml以下のラベルにはディズニーが採用されていないこと。これは、想像するに、750mlパッケージの方がキャラクターが大きく映るためより大きな効果が見込めること、スーパーで子ども連れが家庭用のミネラルウォーターを買う際に内容量が小さすぎると買い渋ることが予想されるため、などの理由が考えられる。

コンビニでの展開

スーパーには1.5L品が展開されていることもある。これは顧客の価値が携帯性にあるのではなく、量にある場合が多いからであろう。ここでの議論はあえて携帯性が重要視されるコンビニや自動販売機での展開についてある程度は焦点を絞っている。

味の多様化を進める「天然水」とパッケージの多様化を進める「evian」

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コンビニの飲み物コーナーでは、さらに興味深い光景が伺える。「南アルプスの天然水」に注目してみてほしい。evianは同じ内容物でパッケージを展開しているのに対して、天然水は同じ容器、異なった内容物とラベルで多くの味を展開しているではないかっ!これもこれで結構おいしい。甘いものは求めていないけども水だと何か物足りない、もしくはせっかく外で買う飲み物がタダの水では勿体無いという心理からか?いろはすも同様な展開をしている。pureを追求するevianは、昨今のコンビニミネラルウォーター市場においては稀な存在だ。

化粧水も展開

添加物を一切使用していない化粧水も展開している。何も加えずに保湿効果が得られるのか、、、といった疑問はさておき戦略としては一貫してpureを謳っている。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/31T8EzCr36L.jpg

Contrexはコンペか?

同じ硬水としてContrexも有名どころである。一説によれば、硬度が高すぎる硬水は日本人の腹には合わないと言われるほどであるが、ニッチな市場を持っているのが硬水たちであり、Contrexである。海外輸入品を取り扱う店舗で良く見かける気がするが、今後の課題としてより深くウォッチしていこうと思う。

evianのデジタルマーケティング戦略

evianのpure戦略は、デジタルマーケティングという方法で広めようとしているようだ。

digiday.jp


ここで紹介したパッケージ戦略は、「マーケティング」本書p42で指摘されている内容、DEATH NOTEの作画担当者が太宰治人間失格の表紙を書いたことと共通点が多い。表紙を変えて製品のイメージを変える、文章は変えずに行間を広くして

活字に不慣れな新しいターゲットの獲得(市場開拓)に成功した

ということと、ミネラルウォーターのパッケージを変えて利便性、イメージを変える狙いがあることには共通点が多く、ある特定のマーケティング戦略が他分野にも適応できることを示唆している。たかが水、されど水のミネラルウォーター市場のパッケージ戦略は、意外にも毎日使うコンビニの一角でバチバチと火花を散らしているようだ。


(*1) ここでいう「パッケージ」とは水をパッケージするいう考え方に基づいて、容器、ラベルの双方を指す。ちなみに、半導体においては、シリコンで作られた回路を囲うのがパッケージ、1つひとつのICをまとめるトレイやリールをパッキングと表現する。